クロスバイクで行くテントツーリング。伊豆諸島の三宅島に行ってきました。
火山噴火の記憶の新しい島ですが、雄大な海や山、野鳥やウミガメなどの動物たちに出会えたりとまだまだ自然は豊富。全島絶景ばかりといえるほど景観が素晴らしいのは特筆に値します。雄山六合目までのヒルクライムも可能。
周囲30km。周遊道路は高低差が大きいものの、伊豆大島よりは標高差が少なく、港で荷物を預けらえることを考えると難易度は低め。むしろ注意点は船の欠航率の高さでしょう。
三宅島旅行の注意点
以下、旅行の注意点。伊豆諸島の旅行ならではの確認事項です。
・三宅島の入出港は当日決まる
三宅島には東海汽船が到着する港が3つ「阿古港(錆が浜)、三池港、伊ヶ谷港」あります。当日の波の向きで決まるため、入港と出港で港が違うこともしばしば。三宅島出港は当日11:00に決まります。東海汽船の公式サイトか案内窓口にTELで確認できます。
当日どの港になっても戻れる場所にいるようにしましょう。時間がかかる雄山ヒルクライムを出港日に行くのはおすすめできません。
どの港になるかで、周回の走行距離も47~65kmくらいと差が出てきます。また、天候が悪いとき、伊ヶ谷港は待合所がなく雨風をしのげる場所もありません。
・欠航の可能性
船が欠航して東京に帰れなくなることがあります。うねりが強い台風などは前後数日欠航することもあり得ます。
・食事のできる場所は阿古が中心、錆が浜にはない。ヒルクライム区間は飲み物補給不可
食事処は錆が浜港のある阿古集落を除くと数えるほどしかありません。三池港周辺には売店の類すらないので、買える場所で買っておきましょう。飲み物は自動販売機が集落にあります。七島展望台にはありません。周遊の途中で七島展望台に寄ると20km近く補給できないので、余裕をもって臨んでください。
今回の走行ルート
1日目に、伊ヶ谷港発で時計回りに1周+雄山(六合目の七島展望台)へのヒルクライム。大久保浜でテント泊。2日目は阿古集落を散策してから三池港へ。走行距離:77km、獲得標高:1760mでした。
竹芝桟橋から東海汽船で出港
JR浜松町から竹芝桟橋へ。浜松町から港までは徒歩10分程度なので、輪行荷物は背負ったままでも移動可能。一見、ゆりかもめで新橋から竹芝に行ったほうが楽に見えますが、上り下りがたくさんある新橋駅より浜松町からの方が楽。
三宅島には大変よくできたサイクルマップがあるのですが、竹芝桟橋では入手できず。結局出港場所でしか手に入らなかったので、PDF版の提供を希望したいところ。
本日の船は、新造船の橘丸。派手な色使いですが、現地で見てみるとそれほど奇抜でもありませんね。
自転車は、通路の手すりに固定します。場所は船員さんが指定してくれます。
出港後すぐに今夜のハイライト、レインボーブリッジの通過。他の船客の皆さんも大ハッスル。部屋でのんびりしすぎると通り過ぎてしまうので、すぐに上甲板でスタンバイしておく必要がありますね。
二等和室で就寝
橘丸の和室は個人ごとの区切りがある豪華版。スマホ時代に合わせてコンセントも用意されています。他の船会社の二等船室でも設置してほしい設備です。船が揺れたときに他の人とぶつかり合ったりしないので本当に楽です。しかし、同じ会社のさるびあ丸と設備の差が大きすぎですねぇ。
三宅島 伊ヶ谷港へ上陸
空が白み始める中、伊ヶ谷港へ入港。入港確立の低い港とあって、船客の動揺が広がります。ここはどこなんだ!?
地元の人の話だと、入港確立は、阿古港50%、三池港40%、伊ヶ谷港10%らしいですね。風向き、季節で全然違うので、あくまで参考ですけどね。
観光港としての整備がまったくない港。突堤しかない!
頼もしい大きさの橘丸。船はこれから八丈島へ向かいます。さよなら、また帰る時まで。
民宿に泊まる人たちも送迎の車に乗って去り、あっという間に人っ子一人いない状態。周辺のことを聞きたければ早めに巡邏に来ている警察官に尋ねたほうが良いです。
高台から見た伊ヶ谷港全景。見ての通り待合所はありません。公衆トレイは、港の近くにあるお寺にありました。
三宅島一周道路
火山でできた孤島なので、100mクラスの高低差はザラ。全線2車線の快適な周遊路。舗装状態も良好。車もほとんど通っていません。
伊豆岬
一周道路からちょっと外れて伊豆岬へ。三宅島でも屈指の絶景ポイントの一つ。明治時代の石造灯台も味が合って好き。このあたりは絶滅危惧種の渡り鳥の中継地でもあるので、周囲を観察しながら散策。
集落間は家が全くありません。あるのは周囲に見える伊豆七島の島々のみ。ほぼ全周にわたってどこかの島が見えるのは三宅島くらいではないでしょうか。
大久保浜到着、テント設営
阿古から大久保浜までが一番アップダウンが激しいところ。今回は最短の伊ヶ谷港なので助かりましたが、錆が浜だったらキャンプ装備を持ったまま島を半周しなければいけません。
本日の宿泊地の大久保浜。火山由来なので、黒い玉砂利が続く海岸です。テント場とは少し離れていますが、集落に自動販売機と個人商店あり。
島唯一のテントサイト「大久保浜園地」。利用には観光協会への事前予約が必要です。
海岸に面した湿り気のない芝生のテントサイト。スペースが広いのでテントを張るのに苦労なし。10個は余裕で建てられます。街灯があるので夜でも安心。水洗トイレや調理場まで備え付けられているという至れりつくせりさ。
周遊再開
無事にテント設営を終えたので、周遊再開。大久保浜は両側から周遊道路に戻れます。周遊道路に復帰した後は旧村役場を見学。ここから西部の三池港までは全体的に下り基調。
火の見峠プチクライム
海岸を快走途中に見つけた火の見峠へプチクライム。
舗装林道を登って着いた「火の見峠」。寄生火山なので峠状ですらない。小山の展望台といった風情です。勾配もそんなになく、すぐに登れる割に展望がよいので、おすすめ。
椎取神社
話には聞いていた火山灰に飲まれた神社。鳥居と社殿の屋根だけ頭を出してます。盛り土の道路の脇にあるので見逃しがち。
ひょうたん山と三七山
昭和にできた新しい火山。地熱があるせいか、このあたりだけ草も生えていません。しかもなんだか暑いです。伊豆大島の裏砂漠のような光景をザクザク進みます。地面はよく締まっているので歩きやすい。周遊道路のすぐ脇にあるので、西部の見どころでは一押しです。
噴火口の先は赤茶けた断崖。こちらにも火口跡があるそうですが、荒波に崩されてしまっています。一度の噴火で入り江が埋まってしまった跡とは信じられません。
風化が進んだ崖に近づくと転落必至。柵もないので自己責任です。
サタドー岬
サタドー岬灯台のある大岩壁。この海にはアオウミガメがたくさん。ひっきりなしに息継ぎに現れるカメさん。透明度がめちゃ高いので、この高さからも手足を動かして潜っていく姿が良く見えます。30分もいたら何十回も見られました。いったい100m四方に何匹いるんだ!いやあ、自然のカメを見たいという夢がかないました。
アカコッコ自然館の話ですと、海にいるのはアオウミガメが主体なのに、産卵に来るのはアカウミガメばかりということですから不思議なものです。
長太郎池
地元の方にお勧めされたタイドプール。池という名称ですが、実際には磯場です。子供も安全に遊べる浅さ。トコロテンの原料の赤い天草が綺麗です。周遊道路から急傾斜を往復しないといけないので、時間次第ではパスするかも。
大路池
バードウォッチングなら外せない火口湖。半周できる林道は未舗装です。湖を1周するには登山道を通らなければならないので、自転車は手前において歩いて回ったほうが早かったりします。
三宅島の動物は全体的に警戒心が薄めな気がしますね。こちらに気づいていても意外に逃げません。自転車で回っているうちに主要な固有種にはだいたい出会えました。
新鼻新山
周遊道路から見える火山。このあたりは日陰もなくひたすら暑いのですが、アカコッコ自然館から阿古まではまったく店や自動販売機がありません。もっと水を買っておけばよかったと後悔しきり。店よりも公衆トイレのほうが多いです。
七島展望台へヒルクライム
本日最後のメインイベント。雄山へのヒルクライム開始です。入山規制で登れるのは六合目の七島展望台まで。
周回道路分岐からいきなり急登が始まります。しかも展望台まで日陰なし。この斜度はいったい・・・暗峠クラスの斜面があるなんて聞いてないぞ!写真のガードレールが水平なのに自転車がすごいことになってる。
幸い、急こう配はここまで。鞍部を越えてカルデラ内に入っていきます。
振り返れば登ってきた道筋がくっきり。
お隣の御蔵島もくっきり。
七島展望台
公衆トイレのある駐車場からさらに登ると展望台。
その名の通り、伊豆諸島が一望。苦労した甲斐があったというものです。しかし、GWだというのに風が強すぎ寒くて長くいられません。
小噴火口でもこの大きさ。
雄山環状線林道から南戸林道分岐まで
雄山の六合目は古いカルデラ跡。溶岩で完全に埋まっているため高原のような広大さです。視界が木で遮られていない分、伊豆大島より雄大に見えますね。噴火前は観光牧場だったそうですが、今は廃墟。火山ガス計測の機械が置かれています。
雄山中腹を360度結んでいる雄山環状線林道も今は各地で寸断。復旧工事中。完全復活したら周回してみたいですが、大半が未舗装の上、跡形もなくなった場所も衛星写真では見受けられるので復活は望み薄?残った道路でも火山弾の跡も生々しい。山頂に近いほど穴だらけ。噴火したら逃げられる気がしない。
南戸林道から下山
南戸林道分岐より先にも雄山環状線林道は続いていますが、途中から未舗装路になります。先まで進んでみましたが景色に代わり映えがないのでUターン。
南戸林道も舗装路ですが、一部改良部を除いてひび割れだらけ。10%クラスの急こう配を下っていきます。道幅はカーブでも狭いままなので、ブレーキは終始握りっぱなし。基本的に森林ルートなので、展望はあまりありません。
例外的な快適舗装路。
最後は唐突に周回道路に復帰します。
阿古海岸
阿古は一番大きい集落なので、食堂もスーパーもあります。期待していた「ふるさと味覚館」は休館中。GWでも休館となると復活は望み薄?観光協会サイトにも休館の情報はありませんでした。困ったものですね。
阿古の天然温泉「ふるさとの湯」に入っていたら、日没になってしまいました。大久保までは街灯も集落もないので、強力な前照灯が必須です。
大久保集落
夜の大久保港も幻想的。
なんとか完全に暗くなる前にテント場に戻ってこられました。この後は他のキャンプ者と楽しく団らん。同じ自転車ツーリングの人もいたりして、周遊途中でも何度か挨拶させてもらっていたので自然に仲良しに。これこそテント泊の醍醐味ですね。重量軽減で配れるお菓子があまりなくてすみませんでした。
阿古学校跡
翌朝は阿古集落の散策。溶岩に飲まれた学校跡
メガネ岩
ダイビングスポットのメガネ岩。片方が崩れてしまって片メガネ状態です。水中洞門もあるそうで、潜れないながらも後で写真を見るだけでも楽しいです。
阿古のスーパーで買い出し
東京までのたくさん時間があるので、昼食などを買い込んでおきます。本当は三池港周辺で買いたいのですが、火山ガスによる住民退避のため港周辺に店が全然ないのです。
三宅島空港の外周海岸道路へ
一周道路を使うと内陸を通るためお目にかからないのですが、三宅島空港の滑走路から三池港へ海岸沿いに進む道路があります。案内板はないですが、こちらの景色は目の前に御蔵島が広がる隠れスポット。道幅が車同士がすれ違うギリギリサイズですが、自転車なら問題なし。
三池港から東京へ
ついに三池港に到着。
行きと同じ橘丸が来港です。
帰路は海洋クルーズ
さらば三宅島。島影から出たとたんに風が一気に強くなります。ここからは海洋クルーズ。双眼鏡で海を渡るアホウドリを眺めたり、次々に近づく七島の他の島を眺めたり。
八丈島航路もGWは臨時に伊豆大島にも寄港するようになったので、三宅島・大島連続ツーリングも可能になりました。大島は欠航率が低いので、三宅島→大島なら安全率も高くなります。
東京湾に入ってからも両岸の展望が続きます。昼間に船で移動するのもいいものですね。竹芝桟橋に着くころには夕闇。あとは気を付けて家に帰るだけです。
阿古/錆が浜と三池を混同なさっているようです。橘丸が発着するのは錆が浜港(阿古漁港)、三池港、伊ヶ谷漁港のいずれかです。
見るからに新しい観光協会が入った茶色の建物があるのが阿古にある錆が浜港で、外周道路に出たところには壁に絵が描かれたホテル海楽やスーパー土屋があるところです。
サンライズがあるのが三池港です。長太郎池や空港にも近いです(滑走路の端が近いだけで空港入り口は結構遠いですが)。三池港に近い集落が坪田/三池地区で、ガスの影響が大きかった地域です。
ご指摘ありがとうございます。記事中の錆が浜と三池港を混同している個所を修正いたしました。ずっと勘違いして覚えていましたね。