戦国時代には来島水軍の地であった来島海峡の小島(おしま)と、出発地の今治造船をご紹介します。小島は明治期の芸予要塞が残る島。丁度海峡の屈曲部にあるので、来島大橋と往来する船の眺めが他にはないアングルで楽しめる穴場です。
半日観光でも楽しめる行程ですが、徒歩の方なら来島大橋を馬島まで渡って、馬島から船で小島、今治造船まで行くと丁度1日観光といったところ。自転車の方もしまなみ海道横断込みでも2日かけるつもりなら十分いける範囲ですのでおすすめです。
今治造船
今治の街からひとっ走り、今治造船まで来ました。造船所の脇に今回乗る来島航路の渡船場があるのです。湾一つ使った造船所には、建造中の貨物船がずらり。あまりに間近なので、構内にいるように錯覚してしまいますね。
船腹の赤さが目立つ貨物船。まだ建造中なのでスクリューも水面上に出ています。船籍情報では、34,794総トン数のバラ積み貨物船ですね。
波止浜渡船場(来島・小島・馬島航路)
船着き場にあった江戸時代の常夜灯。待合室はトイレ、自動販売機が完備。自転車駐輪場もあります。
来島航路船は小さいので、人と自転車専用。 自転車は追加料金が必要です。馬島からしまなみ海道に抜けるのでなければ、途中の島々は小さいので、渡船場で置いておくのがいいと思います。
船に掲載されていた貨物運送費用。しょう油と清酒とかほとんど品目別です。生活感が感じられていいですね。
来島海峡へ
目の前に見えるのが来島。帆船時代では、海峡最狭部に近く四国に近い来島は便利だったことでしょう。
小島(おしま)に到着
来島を経由して小島に到着。 小島は明治32年にロシア帝国の来襲に備えて作られた「芸予要塞」が残っています。この時期の要塞は、各地にありますが、みんな海峡や軍港の近くにありますね。第二次大戦中はすでに使われていなかったこともあって、当時の様子がよく残っているとか。島の規模も小さく標高も100mほどなので、手軽なハイキング程度です。
石垣で固められた岸壁。小さな島ながら立派なもの。
渡船場待合室前の島内案内図。トレイは島内でここだけ。
目の前にかかる来島大橋。今治からだと手前の岬が邪魔して大きく見えませんが、こちらからと壮大そのもの。
海岸際の民家群。四国らしく黒い壁が多いですね。既に住んでいない家も多く、過疎化も限界を迎えつつある様子です。畑は山の上側が中心。お年寄りばかりなので大変でしょうね。
発電所跡
レンガ造りの発電所。部屋内は漆喰で固められています。なんと、窓枠の木材がまだ生き残っています。
水道の蛇口も残っています。明治時代のものにしてはきれいすぎますね。後からつけたのでしょうか。
発電用の燃焼室でしょうか。清掃されているので、とてもきれいです。
南部砲台跡
比較的小規模な南部砲台。石とコンクリで固められていました。室内もきれいです。
弾薬庫跡
万一爆発したときに被害を抑えられるように、島内部に窪地を作って建てられています。通路もいったん曲がっていて、爆風が外に漏れないようになっています。雨が多いと入口の通路が水たまりになるようですが、今日は乾いていました。
屋根は抜け落ちて、外壁のみ残っています。ほかの建物とレンガの色が違うのは、それだけ丈夫に作ってあるのでしょう。
高台にて
北部砲台に向かう途中は、ビュースポット。来島大橋が真正面です。
潮流が強い時間帯だと、潮の流れが見えるそうですが、本日は一番弱い時間帯。それでも一方向に流れているのが見て取れました。
手前に見える鉄塔は、電気用。四国本土から近い島ですが、海底ケーブルではないのですね。
北部砲台
海峡正面の砲台のため、南部砲台よりも規模が大きいです。第二次大戦まで砲が残ったままだったそうで、港の待合室には24センチ砲の写真がありました。また、この地の28センチ榴弾砲が旅順攻撃に持っていかれ、203高地攻略の決定打になったそうです。このあたりの経緯は、司馬遼太郎の著書「坂の上の雲」が詳しいですね。
砲座の跡。この時期のコンクリートブロックは輸入品だそうで、会社名が刻まれていました。
兵舎跡。レンガと石の組み合わせがアクセントになっていますね。中は乾いていました。
大正時代に航空機からの爆撃演習に使われたので、砲台跡が崩れています。これでもほとんど効果なしとされたとか。頑丈なものですね。
砲台のある場所だけに、来島海峡が一望。
海岸線まで下りてきました。目と鼻の先に大型船が通るのは、瀬戸内海の大通りならでは。写真だとイメージしにくいかもしれませんが、あまりの近さにびっくり。よく座礁しないものです。
護岸沿いに渡船場まで歩けます。
渡船場からさらに南部に移動すると砂浜があります。こちらは船の往来が少ないのでよせ波もなくゆったり。
新船入港に遭遇
帰路、船からの様子。来島の裏手に建物があると思ったら、なんと建造中の船。
タグボート3隻で新船を引っ張って入港中。前2隻、後ろ1隻でつり合いをとりながら進んでいきます。
手前の釣り船と比べると、貨物船の大きさが分かりますね。
来島航路船もすぐ後ろについていきます。しかし、こんなに近づいて大丈夫なのか?
最後は縦列駐船(!)です。よくぶつけないなぁ。