房総半島の外房にある、断崖の難路「おせんころがし」。
崖を刻むように続く道は、まさに絶景の海岸美。明治時代には国道であったとは信じ難い光景です。今では山側を国道が通っているため、大沢集落の陸橋で一瞬知見えるだけの知る人ぞ知る名所となっています。
南側から安房小湊の誕生寺の前を通るか、陸橋にある大沢バス停から集落に降りる方法があるのですが、今回は誕生寺から行ってみました。
誕生寺の山門を過ぎ、更に道を進む
一旦国道からそれ、誕生寺の参道に入ります。誕生寺を横目に更に進むと、林道のような山深い光景に。家一軒見当たらない場所ですが、道は広いです。最後に、トンネルにぶち当たります。
ここで嬉しいサプライズが。トンネルをくぐって行くと、突然大海原が現れます。トンネルは急勾配なので、入り口では海が見えないのですよね。これは楽しい。
断崖道路おせんころがしに到着
見えるは崖に刻まれた一筋の道のみ。なんという、断崖絶壁。脇に広がるのは太平洋です。
崖下の波が洗う海岸は岩がゴロゴロしており、登る余地がない急傾斜とあっては、力技で道を刻み込むしかなかったのでしょう。あちらこちらに道の残骸が転がり落ちていることを考えると、よく今も残っているなというのが正直な感想です。
道は大変狭く、車がすれ違うのがやっとという有様ですが、退避場所はところどころに整備されています。振り返ると、誕生寺のある岬の先端が見えていました。
2kmばかり進むと大沢集落
港と赤い橋が見えてきたら、集落です。本当に小さな漁港で、見えるだけで全部です。家々は、崖の中腹に谷に沿って点在しています。
このような地形では、港を作り水もあるという条件を考えると険路もやむを得なかったのでしょうが、安房小湊の広々とした湾を見た後だと違いに驚かされます。さらに崖沿いに明治時代の道は続くのですが、残念ながら通行止めとなっています。
自家製の海苔が干してある。緑色の海苔がだんだんと黒くなっていくのがわかって面白いですね。聞けば自宅用に作っているのだとか。おいしそうです。
おせんころがしの由来は悲話
昔話として語り継がれてきた村娘おせんの悲話が由来。村から嫌われていた父を殺そうという密議があるのを知り、代わりに海に投げ落とされたと言い伝えられています。
幾通りかのストーリーの違いがあるようで、父の身代わりという一番有名な話以外にも、誤って崖から落ちたなどあるそうです。身分もただの村娘や金持ちまで、ただ孝行者の村娘という点は同じです。
「おせん供養塔」は、大沢集落を見下ろす高台にあります。本来、大沢集落からここまで道が続いていたのですが、崩壊により廃止になっているので、一旦大沢陸橋からトンネルを北上し、出口近くのモーテルの方向に砂利敷の道を海まで進んで行き着きます。
周辺地図
最寄りバス停は、大沢陸橋上にある「大沢」。トンネルの入り口というトリッキーな場所にあります。後続車は、まさかこんなところにバス停があるとは思わないでしょうねぇ。
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