潮待ちの港「鞆の浦」
潮待ちの港として古くより栄えた瀬戸内海の港町 鞆の浦。
幕末には、坂本龍馬のいろは丸と水戸藩の船の衝突事件(いろは丸事件)が起きたり、七卿落ちの公家らが立ち寄ったりと舞台の場にもなりました。
ジブリ映画の「崖の上のポニョ」の舞台の一つとしても取り上げられました。劇中に現地まんまの風景が出てきますね。
古い町並みだけでなく、江戸時代の港湾設備が非常に良い状態で残っているのが鞆の浦の特徴。常夜燈(灯台)、雁木(護岸)、波止(防波堤)、焚場(ドック)、船番所(監視施設)が残るのは、ここだけという話です。砂岩の石積みの波止は、歩きにくいかもしれませんがコンクリートやテトラポットの現代にはない味があります。
夜景や朝日の素晴らしさを思えば、ここは宿泊すべき。鞆の浦に泊まって、尾道を見て帰るというルートはとってもおすすめです。
かつての商港は、しまなみを活かした漁業の街に。新鮮な魚介類は、宿泊時のお食事になります。
漁船からの水揚げを運ぶはしけ。波が穏やかな瀬戸内海ならではの光景かな?
福禅寺 対潮楼
朝鮮通信使の休息所となった寺の建物。借景が絵画を思わせる。対岸に見える島は、仙酔島。
見事な古い町並み、趣ある神社仏閣
古い町並みが残る様は見事と言うしかないです。そこらの名の知られた宿場町を上回る規模です。裏路地もまた面白い。クランク状で大店の塀が続くのでいったいどこに出るのやら・・・ちょっとした迷路です。
下は、駐車場スペースになった古民家。街の至ることで、建物を残そうという試みに出会います。観光のためだけに残された町より、今を生きる町により魅力を感じますね。とは言え、シャッターから車が出てくるのは意表を突かれます。
また、尾道ほどではありませんが、背後が山なので街中は階段だらけ。山側は神社仏閣が多く、建物も立派。かつての繁栄ぶりが忍ばれます。海を見下ろす光景も綺麗なので、時間があればぜひ。
酒造の町でもある鞆の浦
鞆の浦は銘酒の産地でもあります。造酒所の大蔵が港前にいくつも並びます。
ちょうど江戸時代の味を復刻した酒の試飲をやっていました。復刻「鞆の浦 保命酒」は、甘いシロップのような味付け。薬だったというのもうなずけます。まさにそんな感じ。
目抜き通りの石畳
両側は、かつての商家です。今は土産物屋ですが、雰囲気はよく残っています。現代的に変更しすぎずに活かしている様は、ぜひ他の宿場町も見習っていただきたいところ。
瀬戸内海の離島 豊島(てしま)行きの船
離島航路は島の足。しかし渋い船ですね。
海賊の城跡と伝えられる寺
昔は島だったそうですが、今は陸続き。湾を抑える岬の突端は、いかにも見張りに便利な場所。江戸時代、役人が詰めた船番屋が港際にあります。
夜景は特におすすめ
夜景の雰囲気が素晴らしいので、そぞろ歩きをおすすめ。福山市街地の近くにありながら山で隔てているため、夜の暗さが際立っています。だから星空も綺麗。漁協付近は夜出発する準備で煌々と明かりが灯っていますが、その他の港部分は街灯の色のせいで、風景が緑色に染まっています。
龍馬の隠れ宿と伝えられる建物近くに来ました。常夜燈の明かりが当時の面影を伝えていますね。
仙酔島から昇る朝日
その美しさから仙人も酔う島とされた仙酔島は、鞆の浦の目の前。朝日が特に美しく、幻想的ですらあります。写真は、鞆シーサイドホテル屋上の露天風呂からの風景です。
論争がなお続く鞆の浦再開発計画
交通混雑を解消するため、海沿いにバイパスを通そうという計画は賛否両論でなお決着がついていません。海に抱かれた鞆の浦の雰囲気はほぼなくなってしまうと言って過言ではなく、一観光客としては憂慮せざる得ません。
一方、道が狭くて危険というのも事実。すれ違えないため延々バックする羽目になる車。クランクだらけで唐突に車が出現する上、塀に囲まれた道は歩行者が避ける余地がないという危険さは行ってみて初めて分かるものです。一観光客としては、残って欲しい!
現地情報
住所
広島県福山市鞆町
交通機関
JR福山駅から市バスで終点鞆の浦下車。
参考URL
鞆の浦・仙酔島ホームページ(福山市ホームページ)
http://www.tomonoura.co.jp/
訪問日:2008年2月